時代を超えて愛される名作スリラー映画4選
今ある映画ジャンルの中で、「スリラー」は、おそらく最も説明しにくいジャンルではないだろうか。たとえば、「スリラー」と「フィルム・ノワール」との違いは何なのか?「スリラー」とは、アクション映画やホラー映画に、中二病的な精神を加えたものに過ぎないのか?結局のところ、「スリラー」と「サスペンス」の違いは何なのだろうか?
こうしてみると、スリラーを定義しようとするよりも、むしろ具体的に振り返ってみるほうが賢明なのかもしれない。よく例に挙げられる名作スリラー映画はどれか、そしてそれらはこのジャンルのパラメーターにどのように貢献しているか。今回の記事では、史上最高のスリラー映画とその主人公らについて探求してみることにした。では早速、詳しく見ていこう。
『羊たちの沈黙』(1991年)
ジョナサン・デミの代表作『羊たちの沈黙』は、スリラーとホラーをかけ合わせたような作品で、後者のジャンルとしては、珍しくアカデミー賞を受賞した作品のひとつだ。作中では、血糊や暴力はあまり出てこないが、題材はかなりおぞましい。ジョディ・フォスター演じるFBI訓練生クラリス・スターリングは、テッド・レヴィン演じる「バッファロー・ビル」と呼ばれる凶悪な連続殺人犯を追跡するため、アンソニー・ホプキンス演じる収監中の人食い人種ハンニバル・レクターの協力を得ることになる。残忍な追跡劇だけでも十分に面白いのだが、デミ監督はこの悲惨な背景を利用して、男女関係や主人公のトラウマに満ちた精神状態を巧妙に描写している。トランスジェンダー問題の扱いは当然ながら批判されたが、最近の批評が評価するよりもかなり洗練されたストーリーに仕上がっている。
『氷の微笑』(1992年)
ポール・バーホーベン監督の映画『氷の微笑』は、他の優れた刑事ものと同様に、「酷いから良い」と「絶妙に素晴らしい」の境界線に位置しているような作品だ。特に、女優シャロン・ストーンが取調室で脚を組みかえる官能的なシーンは大評判となったが、この映画には淫らに露出されたセクシーな脚以上に見どころがある。1992年に公開された同作は、性描写という点で時代を先取りしており、ニューヨーク・タイムズ紙のライターであるジャネット・マスリン氏によってアルフレッド・ヒッチコック監督の作品と比較された。しかし一方で、これまでに製作された多くの名作映画と同様に、論争を巻き起こしたのも事実である。
『メメント』(2000年)
2000年代初頭は、ノスタルジーが最高潮に達していた時期であり、奇妙なミステリー映画『メメント』には、投げやりなおふざけが見られた。それにもかかわらず同作は、主人公が抱える逆行性記憶喪失を巧妙に利用した描写スタイルとなっており、一部逆再生に語られる史上初のメジャー映画として注目を浴びた。このスタイルは長続きしないかもしれないが、同作のばかげたアイデアの背後にあるアバンギャルドなジェスチャーは、メジャー映画としては無茶苦茶かつ大胆である。これが初期のクリストファー・ノーラン監督による作品であることを知れば、時間と記憶に対する同作の執着にさらに魅了されるだろう。
『パラサイト 半地下の家族』(2019年)
映画『パラサイト 半地下の家族』は、映画芸術科学アカデミーが外国語作品嫌いを克服し絶賛するほどの作品だ。本当に驚くような展開がたくさんあり、完全に狂気のミステリーとして描かれているが、一方で、貧困層を抱えているという社会問題と、地下で急速に醸成されつつある階級闘争についての深いマルクス主義的考察も含んでいる。ポン・ジュノ監督は、メジャー映画のレビューを行う批評家が彼の偉大さを認める以前にも、名作SF映画など、常識を覆すような素晴らしい作品を多数発表してきた。